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Japanese
English
VCware ソリューション n-01:Linuxシンクライアント
概要
LANシステムを、ネットワークブート型シンクライアントシステム に置き換えます。
OSはLinux(Ubuntu Desktop )とします。クライアントに必要な機能は画面出力とキーボード&マウス入力、およびネットワーク接続の3機能のみのため、CPUやメモリの性能は2~3世代前のものでも充分 で、ハードディスクやROMドライブといった補助記憶装置も必要ありません 。
サーバにはOS、アプリケーション、ファイルシステム、プリンタ等への出力、インターネット接続などの機能を持たせます。2台から3台のマシンを割り当てます(それぞれRAID10による運用を行い、冗長性を向上します)。
クライアントはOSの起動をネットワーク経由で行います 。アプリケーションもサーバ上で実行 され、ネットワーク経由で画面上に表示します。作成したファイルはネットワーク上のファイルサーバに蓄積します。補助記憶装置(ハードディスクなど)が無いため、情報漏えいやマルウェア(ウィルス等)への強力な対抗手段となります 。また、システム障害の8割を占めるとされるハードディスク故障への対応が必要なくなります(メンテナンスフリー )。
OSをLinuxに置き換えることで、ウィルス対策、セキュリティ対策にかかるコストがゼロ に近くなります(Windowsマシンでなければ使用できないアプリケーションを使用する場合でも、そのWindowsマシンのみネットワークから切り離せば被害は広がらないため、システム全体の可用性に支障をきたしません)。
旧来のLANシステム
LTSP(Linux Terminal Server Project)によるシンクライアントシステム
採用することで有利になるケース
スタートアップ企業(ベンチャー起業)、官公庁、学校、スモールオフィス、図書館の蔵書検索システム、コスト削減を視野に入れたシステムの入れ替えを検討している企業
メリット
ハードウェアにかかるコストが激減 します(ベアボーン+23インチディスプレイ+キーボード&マウスで30,000円前後。既存のマシンを再利用する場合、サーバを除けば0円も可能です)。
OSのライセンス料が0円 になります。
アプリケーションソフトのライセンス料が0円 になります(有償ソフトを使う場合を除く)。
セキュリティが向上 します(意図的にデータを持ち出す場合を除いて、情報漏えいが生じません。ウィルス等のマルウェア対策は、Linuxシステムで完結させる場合、必要ありません)。
メンテナンスコストが激減 します。障害がありうるとすれば、サーバのハードディスク故障ですが、1台1~2万円程度で交換できます。サーバは2TBのハードディスクをRAID10で運用しますが、この場合2TBのハードディスクが4台必要になります。
可用性が向上 します。Windowsシステムでネットワークが構成されている場合、1台のクライアントマシンがマルウェア(ウィルスなど)を実行しただけで、ネットワーク上のすべてのマシンをストップさせなければなりません。企業にとっては大きな機会損失になります。ネットワークブート型シンクライアントシステムの場合、クライアントマシンがウィルスに感染することはありません(ウィルスとはプログラムですが、プログラムはサーバにおいてのみ実行されるからです)。サーバに接続しているユーザの1人が誤ってウィルスを実行してしまったとしても、Linuxシステムの場合、他のユーザに影響を与えません。Linuxはオープンソースのシステムであるため、セキュリティホールの発見がどんなシステムと比べても早期に実現します。サーバ運用者は、24時間おきにセキュリティパッチを適用する必要があります。そのときに、場合によってはシステムの再起動が必要になることもありますが、全ユーザがそれぞれにセキュリティパッチを任意の時点で適用する運用体制より、はるかに効率的で、セキュリティ上も堅牢です。
デメリット
ソフトウェア資産価値が目減りします 。すでに購入済みのWindows用ソフトウェアをLinuxで使用する場合、"wine"というLinuxアプリケーション(エミュレータ)を利用するのが一般的です(VMwareなどの仮想化システムでも実行できますが、低速ですし、Windowsのライセンスが必要です)。すべてのWindowsアプリケーションが動くわけではないですが、非常に多くのアプリケーションを実行できます。しかし、そのソフトがバージョンアップした場合、「アップグレード料金」を支払ってまで使用し続けるのは、あまり現実的ではありません。Linuxネイティブの代替ソフトへ移行するのが現実的です。
ソフトウェアに関する人的資源・ノウハウが無駄になります 。MS-Officeの代替ソフトとして、UbuntuではLibreOfficeを提供しています。LibreOfficeで、MS-Officeで作成したドキュメントを開くことはできますが、マクロ・VBAなどは実行できません。MS-Officeのマクロ・VBAを勉強するのにかかった時間やコストは、無駄になります。
Linuxに対する心理的ハードルは予測不可能です 。従業員の中には、「Windowsの扱いに慣れるため、多くの時間とお金を使った」という方もいらっしゃるかもしれません。「IT音痴」を自認する方もいらっしゃるかもしれません。Ubuntu Desktopは、Windowsに比べて非常に「扱いやすい」システムですが、「Windowsを捨ててLinuxというまったく新しいものに適応しなければならない」という心理的ハードルを感じる方にとって、新しい環境はストレスになるかもしれません。導入にあたっては、適切な事前通知と研修を検討する必要があります。
取引先との互換性が問題になる可能性があります 。取引先との文書交換に、PDFやXMLなどの普遍的フォーマットを使用している場合は問題ありませんが、MS-OfficeフォーマットのようなWindows方言を用いている場合、相手方との調整が必要です。取引先にとっても(コスト削減という意味で)有利になるということを強調して、交渉する必要があります。
Windowsを使用していることを前提にした関係者との調整が必要になります 。たとえば顧問税理士がTKC会員ですと、TKC開発のWindowsアプリケーションでの帳簿作成を求められます。会計用に1台のWindowsマシンを残すことも可能ですが、Linuxには"GnuCash"という非常に優れた会計ソフトが存在します。TKCでは、(TKCアプリでの)帳簿作成は顧客が行い、顧問税理士はコンサルタントに専念することが原則とされているため、場合によっては「交渉の余地なし」となるかもしれません。しかし、多くのTKC会員は、中小企業での一般向け会計ソフト(弥生会計など)の使用や、場合によっては手書きの現金出納帳のみによる帳簿作成を認めています(あくまでも顧客に配慮したローカルルールですが)。GnuCashで作成した帳簿ファイルをTKCフォーマットに変換することはそれほど難しいことではありませんので、交渉してみる価値はあります。また、GnuCashでの帳簿作成を始めるにあたって、各種設定(税率等)を税理士の指導のもと行う必要があるかもしれません。顧問税理士にもGnuCashの概要を学んでいただく必要があります。なお、「交渉の余地なし」となった場合、弊社で税理士を紹介することも可能です。
用語解説
ネットワークブート: コンピュータのOSの起動を「ブート」といいます。WindowsがインストールされているPCの電源を入れると、通常、そのPCのハードディスクに存在するWindowsシステムをコンピュータが読み込み、処理し、ディスプレイに見慣れたGUI環境を表示させます。この一連のプロセスが「ブート」です。今の例では、コンピュータにハードディスクが接続されていることが前提でした。しかし、ネットワークカード(NIC)がネットワークブートに対応している場合、コンピュータにハードディスクがなくても、ネットワーク経由でOSを起動することができます。このとき、OSは、クライアント側(ユーザ側)のコンピュータではなく、サーバにおいて起動しています。クライアントPCは、サーバへネットワーク経由で入力情報を送信するだけで、処理はほとんど行いません(入力をユーザから受け取り、サーバへ送信する、という処理のみを行います)。アプリケーションソフトもサーバにおいて実行されます。サーバが実行し、処理した結果は、出力情報として、ネットワーク経由でクライアントへ送信されます。このときも、クライアントPCは、出力情報を受け取り、ディスプレイに表示するという処理しか行いません。したがって、クライアントPCは、必要最小限の処理能力しか必要とせず、ハードディスクもROMドライブも必要としません。
シンクライアント: 文字どおり、thin(薄い、細い)クライアント。ユーザが使う端末の行う処理は必要最小限で、ほとんどの処理をサーバ側で行うため、コストを圧倒的に削減できます。なお、クライアント側にGUI環境を提供しない(CUIのみ)ケースを「ゼロクライアント」といいます。シンクライアントの対義語は「ファット(fat)クライアント」ないし「シック(thick)クライアント」です。WindowsOSのような、OSをインストールするだけで数GBのハードディスク容量が必要で、起動するだけで1GBのメモリを消費し、アプリケーションを複数立ち上げて快適に操作するにはintelの最新式CPUがなければならない場合、これをクライアントPCに求めるとすると、必然的にファットクライアントとなります。コスト面では、サーバ数×(ハードウェア約10~20万円+OSライセンス約12~23万円)+ユーザ数×(ハードウェア約10万円+OSライセンス1万円+MS-Office3万円)となり、効率的ではありません。Microsoftもシンクライアント対応のWindows Serverを提供していますが、サーバに尋常でないマシンパワーを必要とするうえ、クライアントごとにライセンスが必要で、【余った経費の使い道に困ってしょうがない】企業でないかぎり、導入は現実的とはいえません。なお、Webの世界で言う「リッチクライアント」は、この概念とはまったく関係のないものなので、注意が必要です。
Linux: 狭義には、1991年にリーナス・トーバルズによって開発開始された、Unixライクなオペレーティング・システム(LinusのUnixなので、Linux)のカーネル。広義には、このLinuxカーネルを使用しているOSすべてをLinuxとよぶ。非常に広範なプラットフォームに対応しているため、サーバ、組込みシステム(携帯電話やテレビなど)、デスクトップなどいたるところで使用されている。とくにWebサーバでLinuxサーバでないものを探すのは難しいほど。GNU General Public Licence(GPL)のもとで配布されているため、私用・商用問わず、複製・再配布ともに無料。
Ubuntu: Linuxには、Linuxカーネルを使用した派生OSが多数存在し、それらをLinuxディストリビューションとよびます。現在、人気を二分しているのはDebian系(UbuntuやMint)とFedora系(Red HatやCentOS)ですが、WindowsやMacOSのような商用デスクトップOSにもひけをとらない(近年ではそれらを超えてさえいる)機能の豊富さ・直観的使いやすさ・情報量の豊富さから、Ubuntu Desktopへの注目が高まっています(Desktopとは別にUbuntu Serverも存在しますが、GUI環境でないため、DebianでなくUbuntuを使用するメリットはありません{デメリットもありません})。Mintは、Ubuntuベースに独自のUIやメディアコーデックを同梱した派生ディストリビューション。「No Codecs」と示されているDVDイメージ以外には、DVDのコピーコントロールを回避するライブラリが含まれており、日本国内での配布が違法となりうるため、使用には注意が必要(2012年10月1日より、著作権者・著作隣接権者の許諾なしにDVDのCSSを解除して複製・復元することは著作権違法となりました)。
GNU: 「グヌー」もしくは「グニュー」。Unix互換のソフトウェア環境をすべてフリーソフトウェアで実装することを目標とするプロジェクト、およびそのソフトウェア。GNUプロジェクトはフリーソフトウェア財団によって法的・経済的にサポートされています。GNUは"GNU's Not Unix"(GNUはUnixではない)の頭文字からとった略称で、再帰的名称となっています(上述のwineも、"Wine is not emulator"の略称と言われており、再帰的名称です。wineはCPUスレッドのエミュレーションを行わないので、厳密にはエミュレータではありません)。
LibreOffice: MS-Officeとある程度互換性を持ち、MS-Officeの代替ソフトとして使用されるアプリケーション群をOfficeスイートとよびますが、そのうちもっとも優れた機能を備えたものがサン・マイクロシステムズ社が管理を行ったOpenOffice.orgでした。2010年1月、オラクル社によるサン・マイクロシステムズ買収完了に伴い、OpenOffice.orgの管理はオラクル社に移りましたが、これにともない、同年9月、プロジェクトメンバーが独立、LibreOfficeの開発を開始しました。主要なLinuxディストリビューションはLibreOfficeを支持し、採用しています。2011年、オラクル社はApacheソフトウェア財団にソースコードを寄贈・譲渡し、OpenOffice.orgは終了、後継としてApache OpenOfficeの開発が進められています。自治体・官公庁ではOpenOffice.orgが多く採用されてきましたが、LibreOfficeへの移行が完了した事例も目立っています。MS-Officeとの互換性が高いといっても、たんにドキュメントとして開いて中身を見ることができるというだけで、マクロ機能(VisualBasic for Application)のようなMicrosoft方言は解釈しないため、LibreOfficeに実装されたマクロ機能の修得が必要となります。
RAID: 複数のハードディスクを組み合わせ、仮想的な1台のハードディスクとして運用し、冗長性を向上させる技術をレイドと呼びます。一般的には信頼性と可用性の向上を目的とします。
冗長性: ひとつのデータが、ひとつのハードディスクにのみ保存されている場合、このハードディスクが故障したときに当該データを利用できる可能性はゼロになります。当該データが生成されたとき、複数のハードディスクに同時に書き込まれれば、当該データを利用できる可能性が向上します。「余分にデータを保管しておく」という意味で、「冗長性」があることは、一般的には、良いこととされます。
RAID 1: RAIDの中で最もシンプルな運用構成です。複数のハードディスクに、同時に同じ内容を書き込むため、「ミラーリング」ともよびます。1台のハードディスクの故障率が1%のとき、2台同時に故障する確率は1%×1%で0.01%となり、耐障害性が100倍になります。引き続き(故障にともなう業務停止なしに)システムを利用できるため、可用性が向上したともいえます。
RAID 0: RAID 0は冗長性がなく耐障害性もないため、RAIDには含まれない、という意味で、「RAID 0」と呼ばれます。RAID 0では、データを複数のハードディスクに「分散させて」書き込みます。ひとつのデータを縞状に分割するため、「ストライピング」ともよびます。1台のハードディスクが故障した場合、たとえ他のハードディスクに異常がなくとも、当該データを利用できなくなるため、可用性が低下します。ストライピングの目的は、複数のハードディスクにひとつのデータを分散させることで、読み書き速度を向上させることです。たとえば、アプリケーションを起動する際に、ひとつのハードディスクにプログラムが連続して書き込まれている場合、ハードディスクはこのプログラムを最初から最後まで順番に(シーケンシャルに)読み込むことになります。CPUやメモリの速度は充分に速くとも、それに比べてハードディスクの読み書き速度は遅いため、ユーザはストレスを感じます。2台のハードディスクにストライピングされているばあい、1台のハードディスクの読み込みは半分で済みます。
RAID 10: RAID 0の欠点は、耐障害性がない点でした。むしろ故障にともなうリスクは、ハードディスクの台数に比例して増大します。これを補うため、RAID 0にRAID 1を組み合わせて運用する方法が考えられました。「ストライプされた領域をミラーリングする」か「ミラーセットをストライプする」かで、RAID 01とRAID 10とに分けられますが、RAID 0の読み書き速度を犠牲にせず、かつ冗長性を向上させるには、RAID 10が優れているとされています。RAID 10では、複数のハードディスクでストライピングを行い(読み書き速度の向上)、それらのハードディスクの内容を同時に別のハードディスクに書き込みます(冗長性の向上)。したがって、最低でも4台のハードディスクが必要となります。たとえば2TBのハードディスクをRAID 10で運用するためには、2TBのハードディスクが4台必要です。